2012年8月21日火曜日

司馬遼太郎著「人切り以蔵」

短編集である。
とにかく、読みやすく分かりやすい。
そして、登場人物への愛情を感じる。
人切り以蔵こと、岡田以蔵のような殺人鬼のような人物に対しても哀切を込めた愛だ。
出会いや運の不思議は私も感じるほうだ。
それぞれに出会いや運の遭遇がその人の人生も変える部分があるのではないだろうか。
不遇に対しても慈愛を向けるというのは、やはり作家の人格のように思う。
表題のほかには
鬼謀の人→大村益次郎
火吹達磨とあだ名され医者だった村田増六、のちの大村益次郎。
幕末の兵法家とだけしか知らなかった益次郎の数奇な運命。
そして暗殺によって運命の幕を閉じる。

人切り以蔵→岡田以蔵
これは去年の大河ドラマ「竜馬伝」に登場した。
師とした武市半平太とのいきさつは読後の寂寥感に尽きる。
張り裂けるような思いで窮鼠となる哀しい以蔵。

割って、城を→蒲田刑部左衛門
似ているがゆえに、古田織部に召し抱えられて利用される。
エー、知らない話。
でも、先の先の先まで見通して、自分に似た人間を身代りにしようと考えるなんて。
卑怯者めと云いたいけれど、本当だったら面白い。

おお、大砲→中書新次郎
高取の植村藩、今でも高取城址があって美しい石垣がある。
モミジが城に似合って10月高取町では「城址モミジ祭り」がある。
城址への途中の山中には500羅漢もあり、ハイキングコースとして人気がある。
街は家老跡という旧家や地酒の店、古い建物の医院もあって風情がある。
読み始めて、あーあの街だと親しみが湧いた。
200年間、高取藩の宝と預かっていた大砲が幕末の際、使用した。
しかしそれは、当たった鉄兜に耳鳴りを供する程度の大砲だったという結末。
長閑な山間のお武家様の話。

言い触らし団右衛門→滈団右衛門
愛宕山はよくハイキングで行く。
かわらけ投げの跡もある愛宕神社への表参道は、くねくねと長い階段が続く。
この話は愛宕詣での様子から始まる。
最初は僧形の団右衛門が登場する。
自分自身を大声で売りまくる。
氏素性不明の彼は本物の武士になりたいのだ。
紆余曲折、大坂の陣で彼の願いは叶い、人生の幕も閉じる。

太夫殿坂→作州津山藩・井沢斧八郎
中之島辺りの川沿いを歩いていて「薩摩蔵屋敷跡」というのを見たことがある。
大きなビルの立ち並ぶ大都会の中に。
井沢斧八郎は大阪蔵屋敷の役人として赴任してからのお家騒動。
賄賂に裏金、いつの世もかわりありませんね。

美濃浪人→所郁太郎
田沼意次、意基親子が家系にこだわり、由緒ある佐野家の由緒書きを奪った事は何かの本で読んだこおtがある。
所郁太郎は由緒ある家?に生まれ系図を暗記させられ、養子先でも、次の養子先でも系図を暗記させられる。
理由をつけ、養子先から京へでて、それからの波乱万丈の果ての人生28年のお話。

売ろう物語→後藤又兵衛
名前は聞いたことがある。
自分をより高値に売ろうとした後藤又兵衛
大坂方に売らず、徳川家康の買いに乗ったなら、代々家督は続いただろう。
会いや運の不思議はやはりあるような。




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